大木茂写真展「ぶらりユーラシア」に行きました

オリンパスギャラリーで開催中の大木茂さんの写真展「ぶらりユーラシア」を見に行って、ほんとうに圧倒されました。
ユーラシア大陸の東端から西端まで、72歳で78日間の一人旅というだけで、もう驚嘆に値するのだけど、写真に添えられた(というには、あまりに膨大な)文章もまた読み応えがあります。たとえば.....
1日1本の列車しか来ないロシアの駅で、何人もの職員が働いているのを見て、人に働く場所と仕事を用意することこそが大切なのではないかと考え、省力化・効率化に走る現代社会に疑問を呈する大木さん。
中国国鉄の駅で、入場するときにチケットと身分証明書を機械に入れて、顔写真を撮られて....つまり全ての乗客が、いつどこからどこまで移動したか、ビッグデータに蓄積されてしまうシステムに背筋が寒い思いをする大木さん。(ただ、これは中国だけではなく、日本も似たり寄ったりの社会になりつつあるような気がしますね。)
読んでいて、いちいち共感することばかりです。
中央アジアから中近東を抜けて、ヨーロッパに入り、豊かで洗練された文化の中で、安堵を感じる一方で、ヨーロッパの高度な文明が植民地時代のアジア、アフリカからの収奪の上に花開いたものであることも忘れない。
大木さんは、フランスでスーツケースを盗まれるという災難にも遭っているのですが、アジアでも中近東でも、そんなトラブルに遭わなかったのに、ヨーロッパの中心に入った途端に、アクシデントに遭遇するのも皮肉な話です。しかも、フランスの警察は、まともに取り合おうともしない......
たっぷり1時間半かけて写真展を拝見、拝読し、今回の旅の紀行をまとめた著書を購入。サインをしていただいてギャラリーを後にしました。
ところで、大木茂さんといえば、50年前のキネマ旬報社から出版された写真集「北辺の機関車たち」で、鮮烈な印象を私に残した方です。SLブームと言われた時代、全て冬の北海道、全てモノクロ、荒々しい自然の中で奮闘する機関車の写真にノックアウトされました。やっとご本人とお話しできて感激です。私も70歳で、歳だなんて言ってはいられませんね。

 

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