扉座「ホテルカリフォルニア」を見た

1982年、高校時代に神奈川県立厚木高校演劇部で同期生だった横内謙介、岡森諦、1年後輩の六角精児らが劇団善人会議を立ち上げてから今年で40年。善人会議は1993年に扉座と改名して今に至る。

ナイロン100℃が、前身の劇団健康を立ち上げたのが1985年だから、その3年前ということになる。どちらも日本の演劇シーンの中で、多くのファンを持って、息長い活動を続けている劇団だが、ナイロン100℃がナンセンスコメディから、シリアスドラマ、不条理演劇まで幅広いレパートリーを演じてきたのに対して、扉座は一貫してエンタメ性を基調に据えた作品を上演している。

どちらも私が好きな劇団だが、私が扉座を見はじめたのは、2019年の「新浄瑠璃百鬼丸」からだから、実はつい最近である。その後、「最後の伝令」「10knocks」「お伽の棺」「解体青茶婆」と見てきて、今回の「ホテルカリフォルニア」である。

作・演出の横内が「私戯曲」と言っているように、厚木高校演劇部時代のエピソードから構成される青春グラフィティだ。還暦を迎えた岡森や、来年還暦になる六角が、詰襟の学ランを着て高校生を演じるのだが、何の違和感もなく、40数年前のあの時代にタイムスリップできてしまう。

1970年を頂点とした学生運動は、とっくに下火になっているが、それでも「革命をやるんだ」と豪語する高校生もいたりして、まだ地の底に埋もれ火のような余熱が残っている時代。フォークダンスは、さすがに時代遅れになり、文化祭の後夜祭で、みんなでジンギスカンを踊った時代。つかこうへいの「熱海殺人事件」を演劇部の先輩に連れられて見に行って、演劇の面白さに目覚め、受験校のメインストリームからドロップアウトしていく横山少年(モデルは横内)。

私の高校時代から、約10年の隔たりはあるけれど、あの時代の空気感は痛いほどよくわかる。そして、中学時代にはいなかった、いろんなタイプの人間と出会うことによって、日々自分が更新されていく感覚も。

タイトルの「ホテルカリフォルニア」は、もちろん、イーグルスのあの名曲。

その最後は、

You can check out any time you like

But you can never leave

  きみはいつでも好きな時にチェックアウトできるさ

  でも、けっしてここを離れることはできないんだ

と歌われている。演劇という名のホテルカリフォルニアに40年前に囚われた魂は、今も終わらぬ青春を生きているのでは? ふと、そんなことを想像させるお話でした。

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